2026.7.31
自分自身と客観的に向き合える一枚
2026年6月納品 『時を継ぐ』 (22x27cm)
🌿 富山県 K.F.さまより
還暦を迎えた今年、今までを振り返りながら、第二の人生は田んぼにシフト。
先行き不安な農家ですが、
長女に生まれたので、嫌だといっても誰もしてくれません。
だから、楽しみながら、やりたいなあと思ってます!
そんな今の心境を、馬(丙午生まれ)のいる田園風景に託して描いてほしいと思いました。
出来上がった作品を受け取り、
今までの私と、これからの私。
その狭間にいることを感じています。
私はたまに短歌を作るのですが、絵を描いたり短歌を作ったりすることは、自分を客観視する機会にもなるのかなと思っています。

🎨 坂本澄子より
K.F.様との出会いは2017年。
会社員から画家へ転身した私を取り上げていただいたNHKの番組をご覧になり、メッセージをくださったことが始まりでした。
「つらい時にはホームページの桜の絵を見ています。」
その言葉に、画家になった意味を教えていただいたような気持ちになったことを、今でも覚えています。
初めてお会いしたのはそれから6年後。
ご注文制作で桜の作品を描かせていただき、その後も、季節のおはがきのやり取りなどを通して、ご縁が続いてきました。
昨年の個展で再会した時、
「来年は還暦で年女なので、馬の絵を描いてほしい。」
そうご相談を受けました。
実は、その時はいったんお断りしました。
走る馬を生き生きと描くには、馬を専門に描くほどの経験が必要だと思ったからです。
ところが後日、
「田園風景の中で静かに佇む馬ならどうでしょう。」
そんなお手紙をいただきました。
人生の節目を迎える今の思いを一枚に託したい。
そのお気持ちが伝わり、お引き受けすることにしました。
制作を進める中で、K.F.様のお話をたくさん伺いました。
三人のお子さんを育て上げられたこと。
そして農家の長女として、先祖から受け継いだ田んぼを、次の世代へつないでいこうという決意。
同世代の女性として、胸に響くものがありました。
実は今回、馬の毛色にも小さなエピソードがあります。
最初は白馬をご希望でしたが、田園風景には栗毛の方がしっくりくるね、ということで、その方向で制作を進めました。
ところが完成間近になって、
「やっぱり、もう少し明るい毛色になりますか?」
というご相談がありました。
私には、その言葉の奥に、
「母としてだけではなく、一人の女性として歩んでいきたい。」
そんなお気持ちが重なっているように感じられました。
一方で、私の中のK.F.様は、誠実で力強く、大地にしっかり足をつけて歩く栗毛の馬のイメージでした。
さらに、この段階で毛色を変えることは作品全体の光や色のバランスを組み直すことにもなります。
そのことをご説明し、ご理解いただいて完成となりました。
それでも、お届けした後も毛色のことが気になっていました。
一か月後、思い切って率直にお尋ねすると、こんなお返事が届きました。
理想は白馬みたいな私
現実は…やはり農耕馬😀
でも、心は白馬です👍
思わずクスッと笑ってしまいました。
でも、その言葉には、ご自身をそのまま受け止めながら、これからも前を向いて歩いていこうというK.F.様らしさが表れているように感じました。
K.F.様がおっしゃるように、
絵は、少し離れたところから自分を見つめる時間を与えてくれる。
二度にわたる制作を通して、そのことをあらためて教えていただきました。


