2021.10.2
バリ島の装飾扉
こんにちは、坂本澄子です。
オンライン展示会#2『月の贈り物』はご覧いただけましたでしょうか。
月の光が描き出す11の風景をお届けしています。
制作年も10年間と幅がありますので、その時々の思い出を振り返りながら、毎週1点ずつ、ご紹介していきたいと思います。
今週ご紹介するのは『扉の向こう』、2019年にこのシリーズで3点描いた最初の作品です。
この扉、色鮮やかな装飾がほどこされて、どこか異国情緒を感じませんか。
実は、インドネシアのバリ島で見かけた扉なんです。
バリ島では、このような観音開きの扉をいろんな場所で見かけます。私の観察によると、どうも公と私を分ける位置にあるようです。
例えば、通りと敷地を隔てる塀にもうけられた扉(日本では門扉ですね)。 それからバリの家屋は敷地内に複数の棟があるのが一般的で、お父さんが住む棟、家族が住む棟などそれぞれの個室にもこのような装飾扉があります。
この写真の扉はカフェ・レストランの奥から住居に通じる通路でみかけました。
お昼を食べ終わりまさに店を出ようとした矢先にスコールに見舞われ、 雨が上がるまで待たせてもらったのですが、それがなかったら気がつかなかったかも知れません。
こんなふうに半分だけ開かれ、美しく整えられたお庭を垣間見れるのがバリ風なんですよ。
「見てもいいけど、中には入らないでね」という意志表示のように思えて、それが人とのちょうどよい距離感を作っているように感じました。
そこから着想したのが、『扉の向こう』です。
手前は熱帯のバリ島をイメージした軒先、そして、扉の向こうには別の世界を描いています。
冷たく澄んだ夜空の下に、葉を落とした一本の樹。
手前の水面を明るく映し出しているのは月の光です。
月そのものを描かないことで、見る人の視線が樹に行くようにと考えました。
厳しい寒さの中でも背筋を伸ばして立っている一本の樹は心の様でもあります。
この作品は今、富山県のNPO法人「キッズアイ」様に飾っていただいています。
子どもたちのための安全な居場所を目指し、学童保育に加えて不登校や障害を持った子どもたちのサポートを行っておられる法人様です。 広い場所に引越される際に、子供たちのために大きな絵を飾りたいとお考えで、ご縁あってこの絵を納品させていただきました。
こちらは2020年3月、まさに引越された当日の写真です。
真新しい教室の一番いい場所に、大工さん、子どもたち、スタッフのみなさんで飾られたそうです。
「見守られているようで嬉しくなる」
「なんとなくだけど頑張ろうという気持ちになる」
と、子供たちの感想も上々とのこと。
次の世代を担う子供たちにそんなふうに言ってもらえて、とても光栄でした!