2021.11.13
夢の中のような風景
こんにちは、坂本澄子です。
今週は偶然にも同じ会期で、東京・上野の「第47回現代童画展」、パリの「サロン・ド・アール・ジャポネ」が開かれています。
パリの初めての展示会には蓮を描いた『遠い夏の思い出』を出品しています。
残念ながら現地で参加することは叶いませんでしたが、初日にベルニサージュと呼ばれるオープニングパーティが開かれ、早速会場の様子が送られてきました。
ル・サロン絵画部代表のアラン・バザールさんも駆けつけてくださり、講評をされたそうです。
昨日は上野の会場に行きました。
気持ちの良い青空で、東京都美術館の会場まで歩きながら紅葉し始めた木々に心癒されました。
現代童画会の気に入った作家さんの作品は毎年必ず見るようにしています。
「今年はこう来たか」なんて思いながら見るのが楽しみなんですよ。
週末も会場に行きますので、よろしければどうぞお立ち寄りください!
さて、オンライン展示会#2『月の贈り物』からご紹介する今週の作品は『明け方の夢』です。
25年位前のことです。
その頃、まだ関西に住んでおり、小学生の娘と友人とで兵庫県明石市にある天文科学館に行きました。
展示内容については全く覚えていないのですが、帰り道、明石城のお堀端で見た光景はいまでもしっかり心に刻まれています。
季節は確か12月、木はすっかり葉を落とし、お堀の上にむき出しの枝を伸ばしていました。
そこに無数の白い大きな鳥がとまっていたのです。
夕暮れの薄闇の中、お堀の水の反射を受けてその白さがぼんやりと浮かび上がった光景は、まるで夢の世界のようでした。
鳥は既に眠りについており、くちばしを羽根の間に埋めるようにした姿はぷっくりと膨らんだ蕾のように見えました。
この木のことをその後の人生においても、何度か思い出しました。
それはなぜか辛いとき。
でも、この光景を思い出すと不思議と心が静まりました。
何かに守られているような安心感を感じるのです。
この風景を最初に描いたのはそれから10年以上経ってからでした。
パステルでざっくりと描いた絵ですが、空がちょっと不思議な感じで、その時の内面がよく現れていると思います。
今年描いた『明け方の夢』は2作目なので、背景をいま住んでいる東京の明け方の風景と重ね合わせました。
闇は終わり、東の空が白み始める頃、鳥たちは次第に花へと姿を変えていきます。
手前には磯菊を描きました。
冬枯れの風景の中で、緑、黄、赤と賑やかに紅葉した葉っぱはまるで華です。
葉っぱの裏側は白っぽい色で、表からは白く縁取りされているように見えます。
ミモザのような黄色い丸い花をたくさんつけるんですよ。
ある方がこの絵を見て「動の前の静けさ」と表現してくださいました。
その言葉から、長く暗いトンネルを抜ける前の心の風景が、いまの世の中とも重なりました。
この1年半、社会も経済も内面的にも押し込められた日々が続きましたが、そういった「静」の後で、物事が大きく変わりそうな予感がしています。
それが明るい未来でありますように。
そんな願いも重ねました。
この『明け方の夢』は現代童画会’21関西展に出品します。
私も会場に行きますので、関西にお住まいの方にお会いできれば嬉しいです。
〜現代童画会’21関西展〜
会期:2021/12/15(Wed)〜19(Sun) 10:00-18:00 ※最終日は15:00まで
会場:原田の森ギャラリー本館1F(兵庫県立美術館王子分館)
神戸市灘区原田通3-8-30
ご案内状をご希望の方には案内はがきをお送りしますので、お問い合わせから宛先をお知らせくださいませ。