2021.6.5
地下神殿 x 都会の桃源郷
こんにちは、坂本澄子です。
この写真の場所、どこかご存知ですか?
首都圏外郭放水路 – 東京近郊の中小河川の洪水を地下に取り込み、トンネルを通して江戸川に流すための地下放水路です。
この空間は水の勢いを調節するための調圧水槽で
高さ18mの巨大な柱が59本もそびえ立つことから、通称「地下神殿」と呼ばれているのだそう。
子供の頃からこんな秘密基地っぽいところが大好きで、地底のなんとか、深海のなんとかみたいな番組は欠かさず観ていました。
友人がSNSに投稿したこの写真にも釘付け! 以来、妄想に妄想を重ねました(笑
ここに水が溜まったら、水中植物が生えて、魚が泳ぎ、まるで都会の隠れ家のよう…
などと考えているうちに、昔読んだ小説の一場面を思い出しました。
O. ヘンリの短編で『桃源郷の短期滞在客』という作品です。
ブロードウェイにあるホテル・ロータスは知る人ぞ知る、都会の避暑地。趣味のよい常連客が心地よい空間を求めてやってくるこの場所に、ある夏現れたひとりの優美な滞在客。
30年も前に読んだきりなのに、何かのおりにふと思い出す箇所があります。
「灼熱の日中は、鱒が気に入った池の清澄な憩いの場所にじっとひそんでいるように、ロータスの陰多き要塞に引きこもっているものなのである」 (出典:新潮社文庫『O.ヘンリ短編集(一)』大久保康雄訳)
私の中でなぜか「地下神殿」と「都会の桃源郷」のイメージが重なりました。
巨大な柱の陰を、涼やかに泳ぐ魚になった気分です。(本当は泳げないのですが 汗)
こうしてできたのが、こちらの絵。
苦労したのは、見上げる柱の先にある水面とその上の都会の空。そして、奥深く続く地下宮殿です。
なにしろ想像で描いてますので、描いては直しの連続です。5〜6回は描き直したでしょうか。
その分、見る方にもいろんな想像を膨らませていただけたら嬉しいです。
この作品は7月に開催の展示会に出品予定です。
が、緊急事態宣言が続くなか、いまだ調整中との連絡がありました。
確定したら、ご案内させていただきますね。
今月開催予定だった『二科東京支部展』は残念ながら中止となりました。
予定してくださっていた方、本当にごめんなさい。
9月の二科展本展は開催できるよう祈っています。
皆様もどうかくれぐれもご自愛ください。