2021.7.10
お客様と作り上げた窓
こんにちは、坂本澄子です。
今日はちょっと興奮気味でお届けします。
初めてお手伝いしたステンドグラス、ついに美しい窓となって完成しました。
ご依頼くださったのは岐阜県のKさま。
以前玄関ホールの吹き抜けに飾る大きな絵をご注文いただいてからのご縁で、
「縁側のつきあたりの窓にステンドグラスを入れたい、その下絵をお願いできないか」とご相談を受けたのは、昨年秋のことでした。
ステンドグラスは初めてでしたが、とにかく「やってみたい!」の一心で二つ返事でお受けしました。
ご注文制作の際、イメージをカタチにするためにいつもやっていることは、できるだけ早くいくつかの案をお出しすること。
こちらが最初に出した2案です。
K様のお住まいは築100年を超える古民家。
和との調和と、北向きの窓を明るくしたいとのご希望から、暖かみのある明るい色使いを心がけました。
これに対して、K様からは、
・縁側は18mの長い廻廊のようなもので、その先に置くものとしてはインパクトが第一
・『南の海の妖精たち』のようなキラキラした光の感じを取り入れたい
といったコメントがありました。
また、下絵を考えている間、日々のちょっとした楽しみやお好きな曲などを送ってもらいましたが、これらもヒントになりました。
ラフマニノフの第三番を毎日聴いているうちに、明るく力強く、そして広がりのある情景が思い浮かんだのです。
そこから着想したのがこちらの2案です。
『楽しみがいっぱい』というタイトルをつけてお送りすると、右のデザインを気に入ってくださり、そこから細部を詰めていきました。
制作のメインは、K様がステンドグラスを習っておられる工房の先生。
この大きさの窓は構造上、ケイムと呼ばれる内枠の強化線が必要となるとのこと。
ガラスの各パーツをつなぐ銅線の図柄への影響を、先生に見てもらいながら、ひとつずつ確認していきました。
下絵は実際の大きさでのイメージを確認するために、実寸大で描きました。
小さなサイズでシミュレーションしていたときには気づかなかった、パーツの大きさを調整。
また、18m離れて見ても図柄がわかるように、大きなコントラストをつけなくてはなりません。
うちでは18mとは行きませんが、めいっぱい離れて、何度も確認しながら修正していきました。
ここでふと、「実際にそんな色のガラスがあるのか…」という不安が。
そのことについてお聞きすると、ガラスの多くは輸入品。このコロナ禍では入荷するものが限られることから、出来栄えを左右するガラス選びは、先生にお任せすることになりました。
ひとつだけこだわってお願いしたのが、水紋の入った透明ガラス。下絵にも描きこみました。
年末に下絵を納品して半年あまり、、、
待ちに待った嬉しい便りがついに届きました!
正直驚きました。
ここまで忠実に色が再現できるとは思っていなかったのです。
それぞれの色が、ガラスならではの透明感と輝きを纏って帰ってきてくれた。
そんなふうに感じて、嬉しくてたまりませんでした。
Kさまにお聞きすると、とりわけピンクは希少で、入手にかなりご苦労されたそうです。
ご自身でも手を尽くされ、ようやく手に入った小さなガラスを見た時には頬ずりしたかったくらいと、笑っておられました。
ご注文制作にはお客様とご一緒に作り上げる楽しみがあります。
お人柄に触れ、刺激を受け、完成したときの喜びをともにできる時間は、私にとって宝物です。
今回も素晴らしい経験をさせていただきました。
いつかこの縁側に座ってこの窓を見ながら、Kさまと乾杯できたら。
いまはそんな夢を見ています。