2021.11.6
一期一会のミモザ
こんにちは、坂本澄子です。
秋晴れの気持ちのよい毎日ですね。
太陽がだんだん低くなって、アトリエの奥の方まで朝日が差し込むようになりました。
朝起きてあわてて、絵を影に移動させるのが日課になっています。
街にも賑わいが少しずつ戻ってきましたね。
オンライン展示会#2『月の贈り物』から今週ご紹介するのは、一番古い作品、2011年の『ミモザの月夜』です。
この頃まだ会社勤めをしており、慌ただしい毎日を送りながら、月2回絵の先生のところへ伺うのを何よりの楽しみにしていました。
その頃は、色鮮やかな発色が気に入って、太巻きのソフトパステルを使って描いていました。
先生から「人生の明るい面を描くのに適した画材」と教えていただき、益々パステルが好きになりました。
アンリ・ルソーにマティス、抽象画のパウル・クレーなど、色使いがステキな作品を選んでは模写に励んでいましたが、ある日、先生から「坂本さんもそろそろオリジナルの作品を」と言われて描いたほとんど最初の作品です。
自宅からそう遠くない海辺の公園に、大きなミモザの樹が植わっているのを見つけました。
ちょうど花の盛りで、夜の闇に浮かび上がるように鮮やかな黄色が樹全体を覆った姿が、昔読んだ漫画家・池田理代子さんの『オルフェウスの窓』の一場面に重なりました。
最初の印象を全面に出して、細部はあまり気にせず思い切って描いたのがよかったのか、初めて応募した公募展に入選することができました。
東京都美術館が改装中で、上野の森美術館が公募展の会場になりました。
公募展では二つの作品を上下に飾る二段掛けが多く、初入選は上の段に飾られるのが一般的ですが、上野の森美術館はスペースの関係でさらにもう一段増えて三段がけの一番上のほとんど天井に近い場所。しかもアクリル板が反射して肝心の絵はほとんど見えず。
それでも美術館という場に飾られたことが嬉しくて、写真を撮って実家に送ってはしゃいでいました。
クラシックカーは雑誌で見て、異質だけどミモザに合うと思い、最後に描き加えたのですが、講評の際に「車はなくていいんじゃないの?」と言われてがっくり。
自分としては今でもそこが気に入っているのですけどね(笑)
最近になってまたあのミモザを描きたくなって、記憶を頼りに探しにいきました。
ところが、私が場所を思い違いをしているのか、整備されてしまったのか、どうしても見つけることができませんでした。
あれほど立派なミモザは後にも先にも見たことがなく、残念な限りです。
まさに一期一会でした。
来週10日(水)から現代童画展が東京都美術館で始まり、1年半かけて描いた100号『千年の孤独』を出品します。
土日は会場にいますので、ぜひお声かけてください。
詳しくはこちらをどうぞ。