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重なり合う風景

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《9月のお便り》二科展とケンのこと

 こんにちは、坂本澄子です。

今朝は5時起きして、この夏最後の展示会「オアシス2021」@あべのハルカスに参加するため、9時間かけて車で大阪にやってきました。

途中、米原ICで降りて、醒井・地蔵川の梅花藻を見てきました。

暑い日でしたが、清らかな流れにそこだけ涼しい風が通りぬけていくようでしたよ。

涼しさのお裾分けをどうぞ!

 

 夏が終わると、私の秋は9月の二科展から始まります。

今年は愛犬ケンを描いた作品『ケンのいた夏』(写真右)を出品します。

 ケンはフレンチブルドッグで私の飼った最初できっと最後のわんこ。

昨年3月に8歳7ヶ月で虹の橋を渡りました。

無愛想な顔をしていますが、嬉しいときは「ぶっぶっぶっ」と短く鼻を鳴らして感情表現。

とてもパワフルで、やんちゃ盛りにはいろいろやられました〜。

ある日仕事から帰宅すると、ゲージごと隣の部屋に移動しており、私のお気に入りのジャケットを引っ張り込んでハミハミ。机の端には歯研ぎした跡がガッツリ残っていました(泣)

またある時は、目を離した隙に絵の具をチューブごとほおばって、口の周りが青青青。慌てて病院に担ぎこんだことも(汗)

 絵を描いているとき、ソファで本を読んでいるとき、ふと気がつくとケンがそばにいることがよくありました。そんなとき、ほんの少しだけ身体をくっつけて甘えるのが控えめなケンの流儀。

ボールを転がして遊んでやると喜んで、無愛想顔のままダダダーッ。

「はい、もうおしまい」と立ち上がると、ちゃんと理解して自分の場所に戻る健気なところがありました。

 脳腫瘍だとわかったのは亡くなる半年前のこと。

夏の終わりの散歩中に突然てんかんの発作を起こし、病院で診てもらったら、ケンの小さな脳の半分近くを白い影が覆っていました。

一縷の望みを託して放射線治療を受けたりと手を尽くしましたが、病魔の進行を止めることはできませんでした。

それでも、その半年がそれまでの8年間よりもずっと濃密で幸せな時間だったように思います。

 3月25日、家族全員でケンの最期を見守りながら、私は鉛筆を走らせました。

毛並みの一本一本を記憶に留める気持ちで。

お骨になったケンのそばにこの絵を立てかけていたところ、ある朝、細く朝陽が差し込み、小さな虹を作っていました。

そこで同じ場所に淡い虹を描き加えました。

 『ケンのいた春』はこのスケッチから着想し、大きな作品に仕上げたものです。

雑草の図鑑を買って名前を覚え、公園で詳細に観察したヒメジョオン、カラスノエンドウ、ヨイマチグサ…。思いを込めてぎっしりとキャンバスに描き込みました。

この絵を描いている途中、父も亡くしました。

続けて家族を失った悲しみから、この絵は私を救ってくれたように思います。

草の一本一本までも生命を与えられていることを感じ、いま自分が生かされていることへの感謝、生きるものへの讃歌へと気持ちが変わっていったためです。

 こんな時期ではありますが、会場でこの作品を一緒に見てくださる方がおられましたら、ぜひお問い合わせからご連絡ください。

 

<第105回記念二科展>

 会期:2021年9月1日(水)〜9月13日(月) 10:00-18:00 (最終日は14:00まで)

 会場:国立新美術館(東京・六本木)

 入場料:大人 1000円、大学・高校生 800円

  ※ご連絡をいただければご招待券をお送りします。

 

まだしばらく残暑が続きそうですが、どうかお身体に気をつけてお過ごしくださいね。

コメントもお待ちしています!

  • 伊藤恭子 より:

    こんばんは❣️
    ケンくんの事は亡くなったことだけでビックリしてましたが大変な半年を過ごされてたんですね。
    今更ながらあの元気なケンくんが….と涙が出てしまいました
    お父様まで亡くされ悲しみのなかで描かれた作品をぜひ拝見したいものです
    まだまだ油断はできない日々が続きますがくれぐれもご自愛下さいね❤️

    • sumiko-sakamoto より:

      恭子さま、温かいコメントありがとうございます。
      ケンのやんちゃぶりが今となっては懐かしく思い出されます。
      こんな不安な時期ですが、もしよろしければぜひご高覧くださいませ。

  • Tomono T より:

    SNSで愛犬を見ることが多いですが、小生にとっては悲しい思い出が多くやるせなく思います。
    最初は小学生から大学生になる多感な時期に、当時としては珍しい黒のコッカスパニエルです。短い脚をすごいスピードで動かし、さすが猟犬と思わせる走りっぷりです。名前は往時の米国ドラマ「ララミー牧場」のジェス。ハーパーにちなんでジェスと名付けました。亡くなる直前、黒く透き通ったジェスの目が白んでいくのが辛かったです。
    2匹目は柴犬で尾先が白かったので「しろ」と名付けました。家を新築して外の犬小屋で飼っていましたが、晩年、玄関に居場所を作り寒い玄関で看取りました。
    庭には母と小生しか知らない2匹のお墓が有ります。2人の息子が生まれた時にお墓の近くに植樹し、今では樹齢40年を超えました。

    • sumiko-sakamoto より:

      Tomonoさま
      コメントありがとうございます。
      ジェスくんもしろくんも、家族の一員としてきっと大切にされていたのでしょうね。
      40年を超えた今も、Tomonoさまの中で2匹の在りし日の姿が生き続けていることを、その優しい語り口から感じました。

  • Mark, Aran より:

    ケンのスケッチを見て、素晴らしすぎて、グッときて涙が出てきました。
    また、同時にお父様も亡くされて、さぞ寂しかったと思います。
    ハルカスでお会いした次の日に、一時退院していた愛犬のジャックが天国に召されて行ってしまいました。
    一本一本の毛を描くことは出来ませんでしたが、身体が冷たくなるまでありがとうと撫ぜてやりました。
    あれから一月も経たないのですが、ボロニーズ・パピーのパールを迎えることにしました。
    毛が長くてフワフワで可愛いすぎるので、一度は下手な絵に描いてやろうかと思っています。
    ところで、虹の入ったケンのスケッチはどこかで出展されるのでしょうか?

    • sumiko-sakamoto より:

      Aran Mark様
      ハルカスでお会いした翌日だったのですか。 
      大変なときに来てくださり、ありがとうございました。
      ご家族に見守られての旅立ちだったことが、せめてもの慰めですね。
      パールちゃんの絵、ぜひ描いてあげてくださいね。
      ケンの最期のスケッチはプライベートなものですので、会員の皆様だけにご覧いただきました。
      この絵に思いを重ねてくださり、大変嬉しく思います。

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