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重なり合う風景

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《お便りNo.55》冬の一人旅、森に抱かれて

こんにちは、坂本澄子です。

10日間の冬の旅を終え、今朝無事に帰国しました。

パリでル・サロン(フランス芸術家協会の展示会)に参加したあと、
40年ぶりのドイツへ。

大学で専攻したにもかかわらず、
卒業後はほとんど使う機会のなかったドイツ語。

「ドイツは英語が通じるし、大丈夫」
そう思っていたのですが——

まさか、人生で一番ドイツ語が役立つ瞬間が訪れるとは。


ハラハラドキドキの一人旅

ドイツ国内の移動は鉄道が基本。
乗り継ぎは多いけれど、確実です。

…のはずでした。

フライブルクからローテンブルクへ向かった日。
最初の電車が40分遅れ。

そのせいで、残り3回の乗り換えがすべて崩れました。

慌ててドイツ鉄道のサイトで別ルートを検索。
なんとか見つけたものの、最後はバス移動。

イヤな予感は、だいたい当たるものです。

到着したのは、ホームだけの無人駅。
一緒に降りた3人は、さっさと姿を消しました。

バス出発まで10分。
なのに——バス停がない。

こんな感じのところです

辺りは丘陵地帯。何もありません。
本数は一日数本。逃したら終わり。

10m先に老夫婦の姿を見つけ、駆け寄りました。

“Excuse me…”

通じない。

とっさに出た一言。

“Bus Haltestelle.”

老紳士の瞳をまっすぐ見つめると、
私の必死さが伝わったのでしょう。

「線路の下をくぐった向こう側だよ」

そこに、本当にバスはいました。

公共交通機関とは思えない大型ワゴン車が一台。

乗客は私ひとり。
40分、田舎道を走り続け——

無事、ローテンブルクに到着しました。

あの時ほど、大学時代の自分に感謝したことはありません。


ITは便利。でも…

今回の旅はスマホにも助けられました。

黒の森でもネットは快調。
森の奥の池まで、ちゃんと案内してくれる。

帰国日、ミュンヘンが大雪で空港行きの電車が運休したときも、
AIが次の一手を教えてくれました。

でも。

過信は禁物ですね。

ナビに従った結果、
雪に覆われた“道なき道”や幹線道路の路肩を歩くことに。

吹き溜まりに足を取られながら進むすぐ横を、
大型トラックがビュンビュン。

「森に着く前に死ぬのでは…」

本気で思いました(汗)


静寂の森と、中世へのタイムトリップ

それでも。

黒の森で過ごした時間は、
かけがえのないものになりました。

広い散策路は初心者の私にも歩きやすかった

本当は1日だけの予定だった森歩き。
うっかりミスで計画が変わり、結果的に2日間入ることに。

今思えば、

1日目は“森に慣れる日”
2日目は“森に抱かれる日”でした。

風が枝を揺らすと、
氷の粒がダイヤモンドのようにきらめきながら舞い落ちる。

音のない、色のない世界。

思わず涙がこぼれそうになりました。

フライブルクやローテンブルクでは、
まるで中世に迷い込んだかのよう。

フライブルクの旧市街地

曲がりくねった石畳の路地。
角を曲がるたびに、何かが待っている。

どこまでも歩いていたくなる街でした。

旅の詳しい様子は、写真とともに《旅日記》に綴っています。
よかったらこちらも読んでくださいね。

《旅日記1》小雨に包まれたパリ

《旅日記2》グラン・パレから見えた空

《旅日記3》空が近かった朝の記録

《旅日記4》粉雪舞うパリからドイツへ

《旅日記5》黒の森へ

《旅日記6》フライブルクは中世の時間が流れていた

《旅日記7》時の不連続性〜ローテンブルクの城壁


今月の一枚

ル・サロン(フランス芸術家協会)に出品した
『花と星の降る夜』。

「花と星の降る夜」80x117cm

絵画部長のアラン・バザールさんが開口一番、

「下草まで細かく描かれているのが印象的」

と言ってくださいました。

私はこの作品で、
樹齢千年を超える老木の威厳のある美しさだけでなく、

それを支える生態系にも目を向けていました。

その想いが伝わったこと。
何より嬉しかった瞬間です。

バザールさんと作品の前で

帰国して、東京はとても温かいのでびっくりしました。

もうすぐ桜の季節。

今年は、どんな桜に出会えるでしょう。

今月も最後までお読みくださり、ありがとうございました。

  • 太田正光 より:

    お久しぶりです
    旅日記を含め、澄子さんの素晴らしい行動力と勇気に驚かされました。
    「花と星の降る夜」
    素敵な作品ですね。

    私は未だ人生の岐路に立たされています。
    まだまだ頑張らねば!
    いつの日か会える日を楽しみにしています。

  • 上原けさみ より:

    お帰りなさい。ハラハラしながら読ませていただきました。とにかく無事に帰国されて何よりです。坂本さんの不屈の精神、改めて凄いと思いました。
    お疲れのなか帰国早々のお便り、ありがとうございます。黒の森や滞在されたまちで見て感じられたことが、どんな風景、どんな重なり合う風景になって描かれるのか…楽しみです。
    ゆっくり身体を整えてください。

  • 伊藤恭子 より:

    澄子さんお帰りなさい
    なかなかスリリングな旅でしたね
    私までドキドキしながら読ませてもらいました。
    まずは無事に帰国されて良かったです。
    それにしても澄子さんのメンタルの強さは凄いですね‼️
    うらやましい
    澄子さんの見た風景や感じた体験がどんな作品になっていくのかとても楽しみです
    まずは少しゆっくりと休んでくださいね。

  • sumiko-sakamoto より:

    太田さん、メッセージありがとうございます。旅日記も読んでくださり、嬉しいです。
    振り返ってみるとかなりハードな旅でしたが、体力面でも気力面でもまだ大丈夫という自信にもつながりました。
    太田さんも大きな決断をされたのですから、まだしばらくは緊張の日々が続くかもしれませんが、お体に気をつけて頑張ってくださいね。またお会いできる日を楽しみにしています。

  • sumiko-sakamoto より:

    上原さん、昨夜は安心して爆睡しました(笑)
    今回の旅は荷物を持っての移動も多く、なかなかハードでした。本当に無事に帰れてよかった〜。
    それぞれの場所で見たもの感じたことが、自分の中でどんなふうに消化され、絵としてアウトプットされるのか、私自身も楽しみながら描いていきたいと思います。
    ぜひまた見にきてくださいね。

  • sumiko-sakamoto より:

    伊藤さん、ほんとスリリングな旅でした。
    電車の遅れなど向こうの人にとっては普通のことのようでしたが、勝手がわかないと、余計に心拍数が上がります。
    色々ありましたが、本当に行ってよかったです。今はネットで自宅にいながらいろんなものが見れますが、その場に身を置いて感じられるものは、量も質も全然違うと思いました。その感動が絵に出せればいいなと思います。
    10月の個展で発表しますので、ぜひまた見にきてくださいね。

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