日帰りのバスツアーで訪れたモン・サン・ミシェル。
滞在はわずか４時間ほどでしたが、自然と人工物が一体となった景観に包まれ、忘れがたい時間を過ごしました。唯一心残りだったのは、夜や早朝の姿を見られなかったこと。どんなに幻想的だろうと想像を膨らませるうちに、この作品が生まれました。

遊歩道の脇では、干潟のそばで羊たちが草を食んでいました。潮が満ち始めると、羊飼いの姿もないのに、群れは自然と高台へと移動を始めました。
満ち引きを肌で感じ、危険を避けながら生きるその姿に、自然と共に暮らす知恵を見た気がしました。

海の塩を含んだ草を食べて育つ羊の肉は、地元の名物料理として知られています。
その夜、私はあの羊たちの穏やかなまなざしを思い出しながら、自然のリズムとともに生きる美しさを描きたいと思いました。