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坂本澄子の絵画作品サイト

重なり合う風景

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《お便りNo.37》昔の私からプレゼント

こんにちは、坂本澄子です。

毎日暑いですね。

自宅アトリエから見える東京ビッグサイトには、朝から長蛇の列。

夏のコミケ(コミックマーケット)です。

推し活でしょうか。

日陰ひとつない駐車場、この暑さで倒れないようにねとひたすら願ってしまいます。

さて、今日は箱根に行ったお話からお届けします。

 

〈23年前の私からのプレゼント〉

臨時収入がありました。

前職の外資系企業に勤めていた時にもらったストックオプション。

退職時に大半を使った後、残った端数を長年ほったらかしにしていたのですが、円安でちょっとした金額になっていました。

昔の私からの思いがけないプレゼントです。

何に使おうかな。

先日あるお客様が「少しお金ができたので絵を買おう」と、大変光栄なことに私の作品ページを見て下さったことを思い出しました。

私も若い頃とはお金の使い方が変わってきて、自分の洋服よりも絵の額縁を買う方が楽しみになり、さらには、モノよりも心の豊かさを求めるようになりました。

そう考えると、また行きたいのが「箱根本箱」。

この「箱根本箱」の魅力を一言で言うと、本屋さんに泊まって24時間好きな本が読めること。

しかも、全室に露天風呂が付いていて、読書に疲れたら即温泉という至福の時間。

さらに、食事は旬の食材を使い、洋と和の垣根を取り払った創作料理の美味しいこと。

それから、施設の性格上インバウンドが少ないため、静かな大人の隠れ家が満喫できる。

とくれば、、、

夏休みシーズンでもあり、一泊結構いいお値段です(汗)

ところが、オフィシャルサイトを見ると、本日の空室があり、直前だからか通常より2〜3割お得なのを発見。

これはもう行くしかないですよね〜。

※「箱根本箱」に行かれる際には、オフィシャルサイトからの予約がお得です。

 

〈パワーアップしていた箱根本箱〉

ただいま〜。

フロントからのこの光景を見ただけで、テンションは上がりまくり。

館内の本のあるところに置かれた椅子はいずれもデザイナーもの。

洗練された見た目もさることながら、長時間読書をしても疲れないものがちゃんと選ばれています。

部屋数も少ない、隠れ家のようなホテル。

3年前と同じお部屋にしました。

その理由はこの小さな和室。

絵のヒントになったことを書き残す場所に使っています。

正座して集中。

前回は雨降りで気がつかなかったのですが、ベランダに出ると大文字が見えました。

空は青く、夏の雲。

夏休みが来た、やっほー!

特にパワーアップしていたのが食。

以前もオープンキッチンでいただくコースはとても美味しかったのですが、さらに楽しさが加わっていました。

コンセプトは江戸時代の「東海道」。

それぞれの土地の旬の素材が使われ、お料理の名前も「なんだろう」と思うものばかり。

シェフがヘッドマイクをつけて、一品ずつ説明をしてくれます。

例えば最初の「祝杯」

江戸時代の箱根は「天下の剣」と言われるほど険しい山道。

無事に箱根越えを果たした旅人たちは祝杯をあげて互いに喜びあったそうです。

このコースの「祝杯」は野菜の端切れで出汁をとった滋味たっぷりのスープ。

端切れまで大事にする料理人の思いにほっこりしながら、シェフの掛け声で、オープンキッチンを囲んで着席したゲストがおちょこのスープで乾杯。

知らないもの同士でも一体感が生まれ、一人で来ていてもいい感じで食事ができました。

飲み物はワインのペアリングに加えて、新たに日本酒のペアリングも。

最近日本酒がマイブームなので、お料理に合わせて4種類の日本酒を楽しみました。

ぽってりとした厚みのある古い食器が使われており、子供の頃、実家でお正月だけ使っていたお皿を思い出し、またまたほっこり。

「職人の意地」普通の寿司は食い飽きたという江戸の食通を唸らせた巻き寿司
「江戸時代の目薬」バジルは江戸時代すでにあり、種をお湯につけて目薬として使っていた

お酒は流通していないものもあるそうで、なぜこの料理にこのお酒を選んだかを説明してくれます。

そういう蘊蓄を聞くのが大好きで、お酒もお料理も何倍も美味しく感じます。

「船場煮」お酒は人肌に温めて出してくれました
「豚一殿」豚肉好きだった15代将軍徳川慶喜にちなんで

ね、楽しそうでしょ(笑)

絵にも通じるものがありますよね。

こんなふうに「なんだろう」が「なるほど!」に変わる、人を楽しませてくれるタイトル。

私も見習わなくっちゃ。

<取材もバッチリ>

館内の随所に置かれた約12,000冊の本は新書、古書含めてさまざまなジャンルのものが揃っています。

私は読書家ではありませんが、本に囲まれるとワクワクして、高校生まで図書館が大好き子でした。

月並みですが、小学生の時は江戸川乱歩、高校時代は星新一、その後、夏目漱石にハマりました。

待ち合わせ場所を本屋さんにしてもらえれば、遅れても全然OK。むしろ、遅れて来てくれてありがとうです(笑)

本は通販でも買いますが、その場にあれば、「これからも楽しい本屋さんを続けてくださいね」という気持ちから、そこで買うことに決めています。

ここではいろんな本の楽しみ方ができますが、私はタイトルを見て気になったものを集めてきて、部屋でひたすら読みます。

図鑑や写真集、画集も充実しているので、絵のヒントをたくさんもらえます。

心の底に沈殿し、数年かけて醸成、いつか作品になるといいなあ。

ちょうどこの時、後で「今月の一枚」でご紹介する『目に見えなくても』を描いていたので、宇宙の写真集を見てイメージ作りをしました。

赤丸が太陽の位置、かなり端っこですね。

銀河系は真横から見ると、2枚のお皿を重ねたように、薄く真ん中が少し膨らんだ形をしています。

太陽系は銀河系(天の川銀河)の端っこに位置し、夜空にかかる天の川は銀河の中心部を見ているので、あんなにたくさんの星があるのだそうです。

その夜、雲ひとつない空にたくさんの星が輝いていました。

次第に目が慣れてくると、ぼんやりとですが、天の川が見える気がしました。

昼間の残像かもしれませんが、でも、確かに存在する宇宙を身近に感じました。

 

<今月の一枚>

こうして『目に見えなくても』が完成しました。

天の川は銀河系の中心部を眺めるように、ひとつひとつ星を描き加えていきました。

『目に見えなくても』F20 (61x73cm)

実はこの絵、3月にパリで見た横幅5mはありそうな、一枚の巨大な絵がきっかけになっています。

街の上に広がる夜空を描いた作品でした。

星なのか、街の明かりの反射なのか、とにかく空がとてつもなく明るいのです。

あんなスケールの大きな絵を描いてみたい。

箱根本箱で取材した内容をもとにひたすら想像を働かせながら、「宇宙との繋がり」を私なりに消化して描いてみました。

もし人が何万光年も先が見える目を持っていたら、きっとこんなふうに見えることでしょう。

地球は太陽系に属し、太陽系は銀河系(天の川銀河)の片隅に。さらに宇宙には他にも天の川銀河のような銀河がたくさんあります。

果てしない宇宙と摂理。

強い憧れと畏敬の念を感じます。

 

<展示会のご案内>

この『目に見えなくても』を現代童画会の選抜メンバーによる作品展に出品します。

102名の作家たちのそれぞれの世界観、きっと楽しんでいただけると思います。

初日、土日は会場にいますので、暑い最中ではありますが、ご高覧いただけたら嬉しいです。

ご迷惑でなければ蘊蓄(いえ、作品に込めた思いなど)お話しますので、当日でも構いませんので、「何時頃行くよー」とお声かけてくださいね。

10月に坂出(香川)、12月には神戸にも巡回します。

坂出はスペースの関係で選抜からさらに選抜。今年こそ坂出にも行けますように(願)

『現代童画会’24選抜展』

会期:2024.8.19(月)-25(日) 11:00-18:30 (初日は13:00開場、最終日は16:00まで)

会場:銀座アートホール

 

今月も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

よかったら、感想、コメントください。とても励みになります。

まだまだ厳しい暑さが続きそうです。どうかくれぐれもお体を大切にお過ごしくださいね。

では、また来月!

  • 小林明良 より:

    いつも面白い発見をさせて頂きありがとうございます

    箱根本箱というホテルは全く知りませんでしたので、いつかは訪れてみたいと思います(お金が貯まったらですが(笑))

    暑さは続いておりますので、ご自愛くださいませ

    • 坂本澄子 より:

      小林明良さま
      いつも読んでくださり、ありがとうございます!
      面白い発見ですか、嬉しいです。
      箱根本箱、行って来たばかりなのに、また行きたくなる稀有な存在です。そういう場所が減って来ているので、大事にしたいです。
      あきさんもぜひ行ってみてください。

  • 髙須 章 より:

    12月に現代童画会の作品展で 神戸で 作品と坂本様に 遭えることを楽しみにしています。 ちなみに僕は司馬遼太郎の ”坂の上の雲“”翔ぶがごとく” ”世に棲む日々”、 沢木りょうたろうの ”一瞬の夏” サマート モーム の”月と6ペンス”にはものすごく 感動して ワクワクして読ましてもらいました。 

    • 坂本澄子 より:

      高須 章さま
      コメントありがとうございます。神戸でお会いできますこと、楽しみにしています。

      『月と6ペンス』は一年くらい前に読みました。
      芸術家とは個人生活を捨てそこまでしなければならないのかと思うところもありましたが、目が見えなくなっても死ぬまで描きつづけた執念には胸に迫るものがありました。

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