2022.12.17
最近読んだ本
こんにちは、坂本澄子です。
寒くなりましたね〜。
数日前、窓の外を見ていたら、消防の出初式のリハーサルらしきものをやっていました。
本番ではこの放水は5色カラーになります。
もうすぐ新しい年がやってきますね。
年末年始に本を読まれる方もおられると思いますので、今日は最近読んだ本から特に面白かった2冊をご紹介します。
私はいろんなきっかけから本を読むタイプで、新刊を読んでいるわけではありません。
ですから、今日これからお話する2冊も、「なんだ知ってるよ〜」と思われるかも知れません。
そんな時は、「そうか、そこをおもしろいと思ったのね」と受け止めていただければ幸いです。
ひとつ目は原田マハさんの小説『異邦人』です。
ニューヨーク近代美術館(MOMA)や森美術館で学芸員をされた経歴をお持ちの、いわばアートのプロだった方。
アートを題材にした小説がマハさんの真骨頂ですが、エッセイもアート以外の小説も物語がテンポ良く展開するのがマハ流で、いつも引き込まれるように読んでいます。
『異邦人』もアート小説ですが、京都を舞台として4月の桜に始まる月々の風物詩が、洗練された文章で描写されるあたり、古都の情緒に触れるという点でも楽しめます。
川端康成の『古都』から影響を受けたそうで、なるほどと。
「京都に、夜、到着したのはこれが初めてだった」という、主人公・篁(たかむら)一輝の独白で始まり、2章は妻の菜緒の視点で物語が進み、章ごとに2人の主人公の視点が交互に入れ替わるのも、新鮮でした。
後半はどんでん返し続きの急展開。
文庫本としてはやや厚めですが、半分残っていたのを夜が更けるのも忘れて、一気に読みました。
マハさんのアート小説はほぼ全て読んでおり、『たゆたえども沈まず』(ゴッホの物語)も面白かったですが、『異邦人』は思わず勧めたくなるほどです。
もう一冊は村上春樹さんの『職業としての小説家』
夏の終わりに時間調整でたまたま入った本屋さんで目に留まり、衝動買いした3冊のうちの一冊でした。
小説家を「画家」に置き換えて『職業としての画家』として読んでも、共通することが多くあります。
特に共感したのは、大切にしていることについて語ったくだり。
「そのひとつは自分が意味のあるものを生み出しているという手応えであり、もうひとつはその意味を正統に評価してくれる読者が - 数の多少はともかく - きちんとそこに存在するという手応えです」
それから、誰のために書くか。
これも強く共感した部分です。
また、小説をどのようにして書いているかのプロセスが事細かに紹介されているのも、とても興味深いです。
長編小説であれば、プロットを作って全体を組み立ててから書き始めるであろうと思っていたら、村上春樹さんはプランもなく、展開も結末もわからぬまま、思いつくまま即興的に物語を進めていくそうです。
実は、私も絵を描くときに、ある程度構想ができたら早々に描き始める方で、大きくやり直しになることもしばしば。
その点についてずっとモヤモヤしていたのですが、少し肯定的な気持ちになることができました。
村上春樹さんは推敲の段階で(しかもそれを通しで何回も)、書き直したり、場面ごとバッサリ削ってしまうことも。
辻褄が合わなくなった箇所を丁寧に修正していかなくてはなりませんが、それでも、即興的に書いていく方が楽しいそうです。
それが物語の勢いみたいなものにつながっているのかもしれませんね。
ちなみに一緒に買った他の2冊ですが、
翻訳家としても活躍されている村上春樹さんと柴田元幸さんの対談形式で語られる『本当の翻訳の話をしよう』と、平台にずらりと並んだ新潮文庫100冊から選んだ『月と六ペンス』。
偶然手に取った3冊でしたが、翻訳の話の後、すぐにモームを読み、そして、村上春樹さんの小説家としてのお話。どれもがつながっていました。
優れた文章表現は、瞬時に脳内でビジュアル化されるようで、その時ある小説から着想して描いたのが、『空と海の間』です。(参照:2022/9/10ブログ 小説から浮かんだ情景)
描いた後、数ヶ月寝かせておき、その後作品として仕上げる際には、物語の中で象徴的だったヒロインの緑のレインコートを赤に変えました。
暖色を加えることで、絵としてバランスが良くなると感じたからです。
小説は絵を描く上で一つのきっかけになると思った、貴重な発見でした。
SNSで面白そうな本に出会うこともあります。
このようにきっかけは様々ですが、たまたま読んだ本がつながってくるように感じることがあり、これも読書の醍醐味ではないかと思います。
あなたは今年どんな本がおもしろかったですか?